第151回 有機ナノデバイスの研究 中島安理 准教授 |
最近、有機デバイスへの関心と期待が非常に大きくなってきました。これはウエアラブルデバイスや電子ペーパーなどの用途に用いるためには、有機材料の軽くて柔らかい点がメリットとされるためです。有機デバイスは有機エレクトロルミネッセンスの分野では既に実用化されています。また、有機トランジスタは現在実用化に向けて盛んに研究・開発が行われています。それに対して有機メモリデバイスは比較的研究が遅れています。
私の研究室での研究テーマの1つに、絶縁性有機ポリマーにフラーレンを混合して、フラーレンをナノサイズフローティングドットとしたメモリについて研究があります(図1)。フラーレンは、1nm以下の粒径が揃ったサッカーボールに類似の形をした分子です。これを絶縁性の高いポリマーに混合し溶媒に溶かしてスピンコート法で基板上に塗布する事により、メモリ構造が非常に簡便に作製できます。現在まで、絶縁性ポリマーとしてポリスチレンが適している事を見出しました。また、電子やホールがフラーレンとポリマーの界面準位にトラップされているのか、それともフラーレンのLUMOやHOMOにトラップされているのか未解決だったのですが、後者である事を実験的に示しました。これらの結果はApplied Physics Letters, Vol. 103, 013302 (2013)、Applied Physics Letters, Vol. 106, 1013302 (2015)、Jpn. J. Appl. Phys. Vol. 54, 100303 (2015)に掲載されました。
また関連した研究として、有機電子線レジストにフレーレンを混合させて電気伝導性を持たせました。この材料を用いると、非常に簡便に高集積有機ナノサイズデバイスを作製できます。実際にこの電気伝導性の材料を用いて、有機ナノドットや有機ナノワイヤ構造を電子線露光と現像のみのプロセスで作製しました。フラーレンはこれらの構造中で凝集し底面の直径が約60nmの半球状構造をとっています。この成果はScientific Reports, Vol. 7, 4306 (2017)に掲載されました。
図1フラーレンフローティングドットメモリの構造