ヨコヤマ シン 横山 新 教授 Professor YOKOYAMA, Shin |
先端物質科学研究科 半導体集積科学専攻 ナノデバイス・バイオ融合科学研究所 (RNBS) |
光配線集積回路,集積化光バイオセンサー
金属配線の限界を超える高性能な光配線を持った大規模集積回路の研究と,光共振器と集積回路技術を応用した集積バイオセンサーの研究を行っています.
大規模集積回路(LSI)の性能は,金属配線の遅延時間,消費電力により限界に近づいています.本研究室では,LSIに光配線を導入し,処理速度の向上と消費電力を低減することを目的に研究しています.特に微細加工技術の進歩したシリコン(Si)微細加工技術を駆使して,発光素子,Siリング共振器光スイッチ,光導波路,およびゲルマニウムフォトディテクタ等の光学素子をSi基板上に集積化するSiフォトニクスによって, LSIの未来を切り拓くことを目指しています(図1(a)~(f)).小型のSiリング共振器によって初めて電圧駆動しました.図2にその構造を示します.従来型は電流注入のため,消費電力が問題でした.電流を流さない今回の方式は,低消費電力,高集積化に繋がります.電圧によりSi表面に電荷が誘起され屈折率・共振波長が変化するため,出力光強度が変化します.変調効率は現在125Vで75%ですが,用いる材料と構造の改良によって, 10V以下で90%以上の変調効率が得られる見通しがシミュレーション結果より得られています.
さらに,この技術をバイオセンサーに応用し,ウィルスやアレルギー物質などを,家庭で簡便・迅速に検出できるバイオセンサーの研究を行っています(図3(a)).従来は,酵素結合免疫吸着法(ELISA)という方法が用いられており,病院等に行かなければなりませんでした. Si結合プロテイン(SBP)と呼ばれる蛋白質をリング共振器表面に固定させ,これに結合した抗体と抗原の反応を,共振波長の変化から観測します.集積化により多種類の抗原を同時に検出できます.図3(b)はGFP(緑色蛍光蛋白)抗原‐抗体反応を検出した例です.現在,実用レベルまで感度を向上させる研究を行っています.
図1: 研究トピックス: (a) Siリング共振器,(b) 作製工程の一部(酸化工程),(c) 光共振器における共振状態のシミュレーション,(d) 光共振特性の一例,(e) 作製した光配線LSIの例(256ビット三次元光結合共有メモリ),(f) 光スイッチの特性測定
図2: (a) 目標とする光配線LSIの構造と(b) Siリング光スイッチの特性例.
図3: (a) 多項目高速診断可能なSiリングバイオセンサーの構造と(b) GFP(緑色蛍光蛋白)抗原‐抗体反応検出の例.