広島大学 大学院先端物質科学研究科 半導体集積科学専攻

コラム   

第139回 「手を抜きたい」
 

花房 宏明

助教
量子半導体工学研究室

 

 


実験をするにあたり、
スイッチを押すと、自動的にバルブが開いたり、閉まったり、基板が搬送され、膜が着けられる。
スイッチを押すと、自動的に所望の温度まで加熱され、所望の時間経過後、温度が下がる。
スイッチを押すと、自動的に電気特性が取得される。
スイッチを押すと、実験が終わるのを待つだけ。
スイッチを押すと、実験がすべて進む。
スイッチを押すと、、、、

出来る限り実験条件を揃えたい、安全に実験を進めたいという動機のもと、自動化に頼るのは非常に良いことだと思う。決して手抜きをしたいというわけではなく。

そのような動作を実現するために、自ら制御回路を作ったり、パソコンで制御プログラムを作ったり、最近ではプログラマブルロジックコントローラ(シーケンサともいう)がその役割を簡便に担ってくれる。


初めて自動測定装置を作ったのは電流-電圧特性を測定してくれる装置だったと記憶している。パソコンでI/Oピンを制御し、D/A変換回路チップを使って、256分割(8ビット)された電圧をオペアンプの入力段に入れ、0 ~ 5Vの出力をサンプルに印加する。流れる電流は抵抗を使って電圧に変換し、その電圧をA/D変換回路を使って量子化し、I/Oピンからパソコンで読み取る。
その仕組みを作るまでは直流安定化電源の出力をボリューム抵抗で変化させ、電流計でその値を読み取るということをしていた。ボタン一つで測定がさっと出来るのはなんと便利なものだと感嘆したものだ。

もちろん、先生から色々とアドバイスを受けているうえでの完成だが。

動機は単純でいちいちボリュームを回して測定するのが面倒だったからだったと思う。少し不純な動機だが、皆さんも手を抜いて測定を楽にしたいという動機でもよいと思うので、そうやって思いついたことを実行できる力、試行錯誤して作り出す力を身に着けてほしい。

スイッチを押すと勝手に実験プランが考えられ、それに従えば良いだけ。とならないように。


(2016/09/22)

PAGE TOP
広島大学RNBSもみじHiSIM Research Center