広島大学 大学院先端物質科学研究科 半導体集積科学専攻

コラム   

第133回 「興味あることを見つけ、追い込め!」
 

村上 秀樹
先端物質科学研究科 量子半導体工学研究室 助教
2016年4月より、久留米工業高等専門学校 電気電子工学科 准教授

 
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春は卒業、別れの季節です。広島大学からもたくさんの学生さんが新天地に向け、希望と不安を胸に巣立っていくことと思います。そして、私も24年間お世話になった広島大学から去り、卒業生の皆さんとともに新天地での活動をはじめようと思います。

私は、平成4年に工学部第2類に入学し、千田町キャンパスに1年通ったのち、大学移転と共に現東広島キャンパスに移り、現在に至っています。その中でも、卒論から始めた半導体の研究には20年携わったことになります。素晴らしい研究環境にめぐまれ、充実した研究生活を送らせていただきました。

損得、成果を出すという観点ではなく、「単純におもしろそうなこと、やってみたいこと」をやってこられたことで、今日までやってこられたと思います。面白いと思うことをやっていると、うまくいかなかったときにも、その理由を考え、工夫を加え、仕事をすすめることで、継続して仕事を行うことができる。効率、結果のみを追いかけていると、うまくいかなかったとき、人からは評価はされないし、つづけられなくなることも多々あると思います。

博士課程の学生時代に、製作期間8か月を費やし、微細トランジスタを試作したときに、期待したほど性能がでなかったことがあり、とても悔しかったので、その理由を丁寧に調べていったことがありました。ただの不良解析に半年以上かけて。その不良解析結果を学会発表したときに、某一流大学の学生さんたちと議論させていただき、こんなコメントをいただいたことがあります。「人から評価される結果をだすことにこだわっていたら、こんな面白い結果はえられなかっただろう。要領のよく人から評価されようとする人間はこんなことはしないかもしれないけど、とても重要なアプローチである。われわれも見習うところがある。」と。

彼は、心からのほめ言葉としてこのコメントをしていたと思う。

泥臭く、器用なやり方ではないかもしれないが、一流どころができないことを達成できたことは事実である。

これは、広島大学の学生の真骨頂のひとつではないかと思う。最短距離をすいすいと進む要領のよさや、一発逆転できるほどのアイディアが仮になかったとしても、忍耐強く、自分の興味のある、信じる道を進むことのできる力は、頭の良し悪しとは関係ない、非常に重要な能力であると思います。この能力は、持って生まれたものに加え、その人のこれまでの過ごし方、環境によってももたらされるものと思います。

そして、このような能力をはぐくむ環境が広島大学にはあると、私は思います。

学生諸君には、広島大学でこのような実力をしっかりつけ、社会で活躍されることを切に願います。

最後に、広島大在籍中には、非常に多くの先生方、事務員の皆様にご指導・ご支援いただき、また、同僚や学生諸君の協力をいただきました。この場をかりて、心より感謝いたします。ありがとうございました。

(2016年4月より、久留米工業高等専門学校 電気電子工学科 准教授)

 


村上秀樹先生講演会記念撮影

(2016/04/04)

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