広島大学 大学院先端物質科学研究科 半導体集積科学専攻

コラム   

第123回 「ナノサイズフローティングメモリの研究」
 
中島 安理
准教授
ナノデバイス・バイオ融合科学研究所

 
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 私の研究室では、ナノサイズのフローティングドットを用いたメモリの研究を課題の1つとして行っています。これまで、Siを材料としてナノサイズフローティングドットを電子線リソグラフィー法を用いて作製してきました。得られたメモリ特性から、複数のナノサイズフローティングドットを直列にチャネル細線上に配置すれば、書き込み・消去特性を劣化させずに保持特性を向上させる事ができるという事を示しました(図1)。通常、書き込み・消去特性と保持特性はトレードオフの関係にあるので、この結果は非常に興味深い結果です[Applied Physics Letters, Vol. 92, Art. No. 223503 (2008), Journal of Applied Physics, Vol. 105, Art. No. 114505 (2009)]。
 一方最近、有機デバイスへの関心と期待が非常に大きくなってきました。これはウエアラブルデバイスや電子ペーパーなどの用途に用いるためには、有機材料の軽くて柔らかい点がメリットとされるためです。有機デバイスは有機エレクトロルミネッセンスの分野では既に実用化されています。また、有機トランジスタは現在実用化に向けて盛んに研究・開発が行われています。それに対して有機メモリデバイスは比較的研究が遅れています。私の研究室では、絶縁性有機ポリマーにフラーレンを混合して、フラーレンをナノサイズフローティングドットとしたメモリについて研究しています(図2)。フラーレンは、1nm以下の粒径が揃ったサッカーボールに類似の形をした分子です。これを絶縁性の高いポリマーに混合し溶媒に溶かしてスピンコート法で基板上に塗布する事により、メモリ構造が非常に簡便に作製できます。現在まで、絶縁性ポリマーとしてポリスチレンが適している事を見出しました。また、電子やホールがフラーレンとポリマーの界面準位にトラップされているのか、それともフラーレンのLUMOやHOMOにトラップされているのか未解決だったのですが、後者である事を実験的に示しました。これらの結果はApplied Physics Letters, Vol. 103, Art. No. 013302 (2013)、Applied Physics Letters, Vol. 106, Art. No. 1013302 (2015)に掲載されました。

図1 電子線リソグラフィー法を用いて作製した
ナノサイズフローティングドットメモリの構造
図2 フラーレンフローティングドットメモリの構造

(2015/10/06)


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