第113回 「今思うこと」
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我々は自分が面白いと思う研究を通して学生を教育していると考えてきた。しかし育むのではなく、制しているのかもしれない。
外部評価委員の先生から言われたことが心に残る。“先生達は自分の強いところの専門知識を学生に語ればいい。そのいろいろを聞いた学生の頭の中に撹乱が起きて、自分なりの方向を見出せば、これが新しい学問になる”と。
そうだ、学生達が徹底的に失望し、疲弊しなければ、彼らはいつか自分の道を見つけるだろう。そのためには、教員は自分を信じることができる“専門”を磨き、鍛え、貫き通していかないといけないのだろう。そこでは第三者になることも出来ないし、ましてや他のせいにすることもできない。自分自身との戦いにgive upしない精神力が必要とされているのだろう。
“先生の知っていることをすべて教えてほしかった”と初代の学生が語った。このことをずっと考え続けていた。よく考えてみると、本当は私自身が学生から学ぶことが多かったことに気づく。自分自身に鞭を当て続けられたのはよきライバルがいたからではない。私を信じる学生がいたからに他ならない。
“respect”、学生達に対してこの気持ちを老兵として去る時まで持ちたいと願った。無限の可能性を秘めた器として。難しいことは分かる。しかしこれなくして教育はあり得ない気がする。教員としてこの思いを共有し、学内の学生達の研究発表会でも彼らの努力を汲み取り、彼らが到達した成果に敬意を払うような、そんな組織であること、になることを期待したい。
(2015/03/20)