第99回 「バイオデザイン」
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その日は朝からあわただしいスケジュールだった。ホテルで朝食をとる暇もなく、車を大学の駐車場に入れ、午前8時30分から大学病院の診療棟や入院棟の見学が始まった。医師からの説明によって、米国の医療における問題意識や体制が日本とは違うことがまずわかった。9時45分に病院正面玄関で分かれて、集積システムセンターへ向かった。10時にサラスワット教授と会い、半導体・医工融合研究について意見を伺った。昼食をはさみながら意見交換を続け、医工連携の考え方は日米で異なるところもあるが、工学の立場からは概ね同じであることがはっきりした。
午後には医学部に隣接するクラークセンターで「バイオデザイン」に携わっている医師から医療機器の開発がどのように行われているかを「バイオデザインプログラム」をケースとしてレクチャーを受けた。このプログラムは医療機器に特化した、1~2年の大学院プログラムであり、学生は少数精鋭で、医学部と工学部の教員および業界リーダーが、市場調査、競合分析、特許出願、プロトタイプ製作、薬事法、保険償還、臨床開発、資金調達に至る方法論を徹底的に教える。これには修士学位が授与されないにもかかわらず、成功例が多くあることから、世界中から高い競争率で志願者が集まっている。医療機器の開発に関して、医学の立場からの医工連携は成功か失敗かの死活問題であり、これを基盤技術の研究開発と考える工学の立場とは異なることを認識した。
現在進めている乳がん検出システム開発の内容を医学部教授の方々にプレゼンテーションしたところ、「医療機器は、技術シーズではなく、医師のニーズから出発し、医師が最終的に責任をとれるものでなくてはならない。」という貴重な意見をいただき、開発の方向性を考え直す良い機会となった。
(2014/08/12)