第95回 「装置自作のすすめ」
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ナノデバイス・バイオ融合科学研究所のクリーンルームに入ると、たくさんの自作機器が目に入る。写真にあるガス供給装置をはじめ、クリーンルーム内の真空装置と外のロータリーポンプを繋ぐ真空配管、電気配線も多くは昔の学生達による自作である。自作の主な理由は、費用節約のためであったが、学生の教育に多大な効果があったものと思う。当時のセンター長:廣瀬全孝先生の方針によるものである。私自身、廣瀬研出身であるが、博士論文研究に使用した、プラズマCVD装置・RF発振器・ガス供給装置・容量―電圧測定装置などたくさんの機器を自作した。ものを作る過程で、授業や教科書で習ったことが身につくだけでなく、それ以上に、様々な知識を自分自身で収集する能力や物つくりに必要な考え方が身に付いたと思う。そのスキルは、現在でも、研究に必要な装置の製作・修理など多くの場面で大変役にたっており、恩師にたいへん感謝している。
最近、大学では、競争的外部資金の獲得額が、教員の個人評価項目に入っている。また、お金がなければ研究ができず、研究成果論文がなければ外部資金が得られないという悪循環に対する危機感から、論文剽窃、データ捏造などを行う研究者が後を絶たない。装置を自作すれば、市販品の数分の1の費用でできるものが少なくないし、学生に多大な教育効果がある。また、市販されていない新しいものを作り出すためには自作するしかない。貧乏研究室の方が、色々工夫してよい研究成果を出す例もある。誤った評価基準の撤廃、落ち着いて研究に打ち込める環境整備が重要であることはもちろんだが、研究者は、お金がそれほどなくても優れた研究を実行できる、装置自作の能力を身に付けることをお勧めする。
(2014/06/23)