広島大学 大学院先端物質科学研究科 半導体集積科学専攻

コラム   

第89回 「たまたま能力を備えた人のために」
 
藤島 実
教授
先端集積システム工学研究室


 >>  研究室ホームページ


 3月は卒業のシーズンです。広島大学の卒業式も3月23日の日曜日に行われました。大学に入学して卒業できたことは、本人の不断の努力があってこそであり、祝福されるべきことでしょう。でも、見方を変えると、暗記力や思考力など勉強の基本や、努力に耐えられるという天賦の才能が他の人よりもたまたま備わっていたからと考えることもできます。走ることの得意な人もいれば不得意な人もいる。オリンピックで金メダルを取って賞賛を浴びる人もいれば、小学校のかけっこでビリになる子供もいる。努力は結果に影響しますが、必ずしもその人の努力だけで結果が出たのではありません。生を受けた時にたまたま備わった能力が、努力できるというもう一つの能力と合わさって結果につながったと考えることもできます。才能は生まれてくるときに自分で選ぶことはできません。しかし、才能は多岐にわたるために、ある分野でほんの少しは秀でた才能を持つという人がほとんどでしょう。広島大学に入学して卒業できた人たちは、学業で平均的な同世代の人たちより秀でていたことは間違いありません。でも、それは自分の努力だけでなく偶然という面もあるのです。
 天賦の才能とは、文字通り天から与えられた贈り物なので、自分のためだけでなく他者のために使うべきだという考えがあります。ノブレス・オブリージュ、位高きは徳高きを要すと訳されますが、自分に与えられた才能は自分のためだけでなく周りの人を幸せにするために使おうという言葉だと思います。才能を偶然持った人たちがそのような自覚を持てば、これからも住みやすい世の中であり続けるという気がします。 

 

(2014/03/26)



PAGE TOP

広島大学RNBSもみじHiSIM Research Center