30年以上に渡って世界中の多くの研究者は、認識・学習機能を実現できるインテリジェントLSIを発明しようとしてきた。このインテリジェントLSIにとっての重要な目標は、柔軟に広範囲の人工知能アプリケーションに適合させること,いわゆる幅広い汎用性を有する高性能なインテリジェントハードウェアの実現であった。ニューラルネットワークは、この目標を実現するための最も重要な候補であったが、残念ながらこれまでに汎用ニューラルネットワークの実用化は達成されていない。現在、アプリケーションごとに異なる特殊なニューラルネットワークに制限されて使用されている状況である。別のコンセプト、例えばサポートベクターマシン(SVM)は、汎用的でインテリジェントなハードウェアを実現するために使用することさえも達成できなかった。その結果、計算処理のためのマイクロプロセッサのように,インテリジェントシステムのための普遍的な標準LSIへの夢は、今日まで現実のものとなっていない。
現在,我々の研究グループでは任意のインテリジェントなアプリケーションを普遍的な標準LSIで現実する代替コンセプトを開発している(図1参照)。このコンセプトは、データベースにおいて高い並列度での最近傍探索を効率的に実施可能な集積回路に基づいている。我々はこの回路を最近傍検索エンジンと呼ぶ。最近、我々はコンパクトな完全パラレル型のデジタル最小ユークリッド距離検索エンジン(図2参照)の開発に成功している。このタスクは、これまで世界の他研究グループによって達成することができなかった。今、我々は任意のアプリケーションの特徴ベクトルの次元に対して検索エンジンの次元数を柔軟に調整可能な新しい有望なコンセプトに取り組んでいる。これは、同じ最近傍探索エンジンが、学習及び認識の分野で任意の実用的な人工知能アプリケーションに適用できることを意味する。従って、人工知能アプリケーションのための普遍的な標準的LSIの夢が現実に近づいている。我々は近い将来,この目標を達成するために一生懸命に努力する。
図1: 任意の人工知能アプリケーション実装できるLSIチップのコンセプト
図2: 最小ユークリッド距離検索エンジンのチップ写真