広島大学 大学院先端物質科学研究科 半導体集積科学専攻

コラム   

第75回 「研究室の防災ヘルメット」
 
黒木 伸一郎
准教授
ナノデバイス・バイオ融合科学研究所


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    研究室に防災ヘルメットをおいている。前職・東北大で学生・教職員に一人一つずつ配布されていたものだ。無論、東日本大震災のときは、揺れ始めて2秒後には手に取り、それから数ヶ月復旧活動をともにした。寝る間も手にしていたから、生活を共にしたというべきかもしれない。

    震災のときの、学生教職員の避難は見事だったと思う。建物前の広場、指定の避難場所に、皆一様に防災ヘルメットを被りすみやかに避難した。地震で左右に大きく揺さぶられ、建物の廊下は文字通り上下に曲がり、壁が崩れ落ちる中をである。東北大で防災ヘルメットを一人一つとした経緯がどのようなものだったかは知らない。ただいつかくる宮城県沖地震に備えるとしていた。

    人は多くの場合、日常的なバイアスから、非常事態を想定しにくい。想像力が必要である。だから、いつ起こるか分からない地震に一人一つずつ防災ヘルメットを配布するなど、そう目立ちはしないけれど、大きな決断だったと思う。ただ命をまもる、安全確保という、明確なミッションのもと、リーダシップがとられたのだと理解している。目標・ミッションのために、やるべきことはしっかりやる。何でもないことかもしれないが、この防災ヘルメットの配布に心から敬意を持っている。もちろん防災ヘルメット配布は、その他多くの防災対策の一つであり、その対策の積み重ねで安全が確保されるわけではあるが。

    仙台から広島に移り、それまであった常に地面が揺れているような感覚はようやくなくなった。震災のときから、実際に余震で断続的に地面が揺れていたため、地震酔い状態であったわけだが。自分の危機管理レベルも、緊張状態からだいぶリラックスさせている。でも研究室の防災ヘルメットは、いつでも3.11後の日々に自分を引き戻してくれる。明日のためにやるべきことをやろうと。

 

(2013/8/9)


 


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