コラム
「賢者は歴史に学び愚者は経験に学ぶ」は、初代ドイツ帝国宰相ビスマルクの言葉とされています。人が成長するためには学びは不可欠です。学びは、与えられた情報を受容し自分の行動や思考に反映させることです。最初のビスマルクの言葉は、決断を迫られる際に学ぶべき対象についての経験則として1世紀以上日本で語り継がれてきました。ただ、このビスマルクの言葉は書物に書きとめられた言葉というわけではなく、もともとビスマルクが愚者は自分の経験に学ぶと言うが私は他人の経験に学ぶのを好むという趣旨の言葉を述べたものが意訳されて今に伝わる言葉になってきたということです。
他人の経験を学ぶために、人から直接教えを乞うか本を読む以外の方法がほとんどなかった昔は、情報収集に一定の労力が払われなければなりませんでした。今では、インターネットを通じて数多くの他人の経験を口コミなどで簡単に入手することができるようになっています。インターネットを活用する多くの人たちが口コミを参考にし、自分の行動に何らかの反映を加えられる現在でも、ビスマルクから派生した最初の言葉が風雪にたえ語り継がれてきたのは、この言葉が日本人に合っていたのかもしれません。
ただ、あまりにも多くの他人の経験が簡単に入手できるようになると、相反する経験則も同時に入手することが多くなります。その際な様々な意見が混在する場合に、どちらを選択するかについて自分には2つの経験則があります。ひとつは、昔から語り継がれえている意見を尊重することです。これまでに良い結果を数多く導いてきたからこそ長い年月を生き抜いてくることのできた言葉は、自らを良い結果に導く確率が高いと推測できます。もう1つは、自分と異なる文化や環境あるいは世代の人の意見に耳を傾けることです。決断に困るのは自分の経験だけでは判断つかない場合ですが、このような場合には、より多くの情報を入手し選択肢を多く持つことが比較するうえで役にたちます。自分自身がこれまで思っていた、あるいは感じていた意見と異なる意見に耳を傾けることは、過去と同じ失敗を繰り返さないためには重要なことです。
今の時代は、歴史を含む他人の経験を入手することは昔に比べてはるかに容易になってきました。そこから学ぶ、つまり自分のものとして受容するときの能力の重要度は、より多くの情報を入手する能力から、与えられる情報をうまく選別する能力へと変わってきていると感じます。
オットー・フォン・ビスマルク(ウィキペディアより引用)