第41回
「勝って驕らず負けて悔やまず」 藤島 実 >> 研究室ホームページ |
競泳は、ルールに従っていれば、100分の1秒でも早ければ勝ち、遅ければ負けという勝敗の極めてはっきりした競技です。しかし、本当の勝負は自分との闘いです。記録が伸びれば伸びるほどベストタイムで泳ぐことのできる頻度は減ってきます。このとき、実体験として学んだことが、表題の「勝って奢らず負けて悔やまず」でした。日々練習に打ち込んでいても、よいこともあればわるいこともあります。昨日の努力が今日必ず報われるとは限りません。しかし、狙いを定めた方向に努力を続けることが成功への確率を上げていきます。
じゃんけん勝負でたとえてみましょう。各回勝負がつくまでじゃんけんを続けるとすれば、勝つか負けるかはそれぞれ50%の確率。絶対勝ちたいと念じたとしても、50%の確率で負けます。しかし、勝つまで続けると決めると、10回行えば最低1回勝てる確率は99.9%。ほとんどの人は勝てます。20回行えば最低1回は勝てる確率は99.9999%。それでも100万人に1人は20回連続で負けるのですが、運悪くその100万人に1人になることもあります。でも、あと10回続けるとすれば30回連続で負け続けるのは10億人に1人の確率というように急激に負け続ける確率は下がります。つまり、この場合、勝つ可能性の残されている勝負を何度もチャレンジすることが勝つための最も重要な戦術ということになります。
しかし、研究を含めて短期で成果が求められる場面も少なくありません。PDCA(Plan/Do/Check/Action)サイクルでの業務改善が大学で求められていますが、うまくいかないときのCheckが本当に正しいかどうかの見極めは実は大変難しい。本来50%の勝率があったじゃんけんも、たまたま負けたときに考えた戦術が相手に見破られれば、勝率が50%きるリスクも生じます。勝つか負けるかはときの運。勝とうが負けようが、その勝負の勝率はどれくらいだったかを冷静に判断し、次回の勝率アップにつなげる方策があるならそれを実行することこそが、勝つための最も効果的な方法ということになります。つまり、見えない確率を見極める能力が「勝っても奢らず負けても悔やまず」の核心ではないかと思っています。
実際には、確率を見極める能力があるかどうかを見極めることもなかなか難しいので、最後は信じるところを一生懸命に頑張るということになるのですけどね。
(2011/10/20)