第27回 「求む!職人気質 ~専用道具のすばらしさ~」 村上 秀樹 >> 研究室ホームページ |
私は、道具を手に入れるのが好きだ。仕事の道具にしても、趣味の道具にしても、まず道具から入るタイプである。今回は、最近手に入れた道具のうち、当たりのモノをいくつかご紹介したいと思う。
まず一つ目は、書類専用の「ドキュメントスキャナ」だ。
身の回りにある紙書類などを連続的に高速でスキャンしてデジタル化できるというシロモノ。使い始めてみたところ、感動を覚えた。
巷で「自炊」と称して、本を切り開き電子データ化するのが流行っているようだが、私はそういう使い方ではなく、配布された紙の資料や、手書きのメモなどを電子化して保存している。
例えば、本棚や引き出しから、もう1年以上、もしかすると3年も開いていない説明書や紙ペラがでてきたりするが、捨てるのは後で弊害がありそうで、またしまう・・・・ということが多いのではないだろか。そこでドキュメントスキャナを使い、電子データにすれば、心置きなく捨てられ、物理的に片付くし、精神的にも非常に快適である。
片付けが苦手で、すぐに書類をどこかにやってしまうタイプでも、コレがあれば部屋に散らばる紙書類をデジタル保存し、後で簡単に検索もできるのだ。この検索機能がありがたい。
紙資料も重ねた高さにして5cmくらいまでならなんとか見つけられるし、むしろ手で探したほうが速いが、10cm積もってくると、そうはいかない。ただ、事務仕事が専門ではない小職にあって、本当に必要ですか?何のために?と聞かれると理由は、ひとつ「スッキリしたいから!!」につきる。
私と同じように身の回りに書類があふれ、いざ必要なときに書類が出てこない人種の人にはぜひおすすめしたい。
二つ目は、「ホッチキスはずし器」である。
ホッチキスは、何枚もある書類をしっかりと綴じてくれるファイリングの道具としてデスクワークには欠かせない存在だ。しかし、スキャンをする場合や分別回収の関係で、ホッチキスの針を外す作業は、結構やっかいなものだ。通常のホッチキスには一応、おしりの部分にへラ状のリムーバーがあるが、上手く外れなかったり、紙を痛めてしまったりする。また、手ではずしたりすることもあるが、これは結構危なく、何度か出血事故を起こしたことがある。
そこでこの専用器具の登場だ。シンプルな作りゆえに、使い方もとても簡単。先端をはずしたいホチキスの針にくぐらせ、ハンドルを軽く握り締める。ただそれだけで、これまであんなに苦労していた作業が、うその様に簡単にできてしまう。はずした後の紙も穴は開いているものの、ほとんど傷みはない。針の下側を固定しながら、上から押さえつけることで、針は真ん中から折れて、紙の裏側に綴じこまれている針の足が浮き上がってくるという仕掛け。この外すときの感覚はことのほか快感で、ぜひ味わっていただきたい。
さんざん趣味に走った文章を綴ったが、ここで知っていただきたいのは、「専用道具のすばらしさ」である。一般的に、何かひとつしか出来ない道具と、ひとつでなんでもこなせる万能な道具のどちらを選ぶか?というと、万能のほうを選びたがる傾向があると思う。費用対効果を最大にするためにはすこぶる自然なことだと思うが、過去数限りなく無駄な買い物をしてきた私の意見としては、万能なものが万能であることは非常に稀であるということだ。
ひとつのことしか出来ない道具は、専用がゆえに非常に洗練されていて、機能が単純であるため構造もシンプルで、普遍的である。
これは、デジタル家電でも当てはまるフシがあるのではないかと考えることがある。今回とりあげたドキュメントスキャナもプリンタも一緒になった複合機でよさそうなものだが、使ってみると利便性の観点から圧倒的に便利である。パソコンは万能道具の代表選手と思うが、単純な計算をするときは、ただの電卓のほうが便利だったりする。
話はすこし大げさかもしれませんが、専用の道具を手にし、いじって、整備して、使っていると、職人気質を自分の中に感じることがあります。自分の技能に自信と誇りを持って、納得いくまで丁寧に仕事をする職人的な姿勢は、研究を進めていくのに非常に重要な事だと思います。
皆さんにも専用道具のすばらしさ、機能美を知っていただきたい。そして、自らに眠る職人気質を呼び覚まして欲しいと思います。まずは、ホッチキスハズシから始めてみませんか?
(2011/6/9)
愛用中の富士通 スキャンスナップ(左)とサンスター文具 はりトルPRO