コラム
最近幾つかのWebサイトや教科書でpn接合の電流の立ち上がり電圧の記述について、放置できない誤った説明を見かけたので、ここに紹介する。図1の説明(あるWebサイトより抜粋)でおかしなところがあるのにお気づきだろうか。図中にexpの式(3.13式)を示しておきながら、立ち上がり電圧を、デバイス面積もスケールも無い状態で議論し、電流の式に全く現れていない拡散電位と物理的に関係付けている点が完全に誤っている。図2をご覧いただきたい。立ち上がり電圧が1V(図(a))と0.3V(図(b)付近の特性が示されている。図1の説明によれば、これらはGeおよびGaAsのpnダイオードの特性ということになる。しかし、実際は、式(3.13)でJs=2x10-14 Aとした1つの特性をスケールを変えてプロットしただけである。通常市販されているダイオードは、接合面積が直径1mm程度であるので、1mA程度を最大メモリとしてプロットしたときに偶然その値がその半導体デバイスの拡散電位に近くなっただけのことであり、物理的に拡散電位とは直接の関係はない。デバイス面積およびグラフの縦軸のスケールを変えれば、立ち上がり電圧はどんな値にもできる。
教員が、教える内容を今一度チェックすべきことはもちろんであるが、
学生諸君には、教科書を鵜呑みにせず、自分の頭で考える習慣を付けてもらいたい。
図1 pn接合順方向電流の立ちあがり特性
図2 pn接合順方向電流:表示スケールの違い