第11回 「国際会議に参加することについて」 吉川 公麿 >> 研究室ホームページ |
前回に続いて、国際会議のエピソードをふたつお話ししましょう。
最近のことですが、国際会議に出席するために外国でタクシーに乗り料金を払っておりた後、財布がないことに気づきました。海外で財布をなくすと絶対に見つからないといわれていたのですが、タクシー協会へ電話したりして一応じたばたして見ました。半分あきらめていたとき、全く知らない人からemailが来ました。subjectにwalletというキーワードがあったので、もしかしてと開けてみると、「私のガールフレンドが財布をタクシーの中でみつけた。」と有ります。メールはアイルランドからです。財布に私の名刺が入っていたのです。ガールフレンドは現在海外旅行中のためアイルランドのボーイフレンドにメールで知らせたのです。早速、お礼の返事と私がタクシーに乗った時と場所の様子を伝えると、再び、ボーイフレンドから「間違いないので、中に入っているお金を日本円の小切手にし、財布ごと小包で日本の住所に送り返します。」とあります。しばらくして、今度はガールフレンドの方から、「今日、小切手にして日本に送り返しました。」というメールが来ました。外国送金するだけでも日本円では5千円以上かかるのに、ほとんど奇跡のような親切さです。私も直ちにお礼の返事を書きました。そのまた返事がきました。
What a lovely email - thank you. I hope that you come back to Ireland some day soon - you would always be welcome. May God bless you too - Warmest Regards,
私が生まれて初めて海外に出て国際会議に参加したのは今から30年前、ワシントンで開催された1980 IEEE International Electron Devices Meeting (IEDM)です。当時20代の私の英語力がいかに低かったかを示す事実。レストランでメニューが全く読めないので知っている単語をオーダーしたら、生ほうれん草がボウルに山盛りになって出てきました。私がオーダーしたのはSpanish SaladのつもりがSpinach Saladで、結局、私のディナーはそれだけでした。発表練習は何ヶ月も前からオフィシャルに行われましたので、青焼きスライドを使った発表は難なく終えたのですが、質問は全く理解できませんでした。そのとき通訳して助けて頂いたセッションチェアが現在スタンフォード大学教授の西義雄先生です。また、私の発表を聴いて、本を執筆するよう声をかけて頂いたのが当時MITにおられたジェノバ大学教授のアントネッティ先生で、これが3年後に私がMIT教授のアントニアディス先生の研究室に留学するきっかけになりました。その前週にはSilicon Interface Specialist Conference (SISC)がサテライトとして開催されており、同じセッションで、若い日本人研究者と一緒になりました。後に私の博士論文の主査をして頂くことになる現在東京工業大学教授の石原宏先生でした。夜のディナーの時には、私が食べ物をとることができなくて困っている様子を見て、若い青年が親切にも皿にとって、いろいろ説明しながら私に優しく話しかけてくれました。現在エール大学教授のマー先生です。今では大御所の先生方も当時は30代前後の気鋭の若い研究者でしたが、みんな当時から人に優しい方でした。以来、30年間親交を深めています。MITのアントニアディス先生もエール大学のマー先生もそれぞれ2007年、2005年に広島大学ナノデバイス・バイオ融合科学研究所に招待し、21世紀COEワークショップで講演をして頂きました。
http://www.rnbs.hiroshima-u.ac.jp/21coe